第3話

 …もし両腕両脚がこんな風に椅子に固定されていなかったならば、私はいまごろ陸に上がった魚のごとく転がり跳ね回っていたことだろう。
 そのくらい、股間を襲った震動は激しく、想像を絶していた。
 激しく身体が上下左右前後に揺れるが、拘束はガッシリとしていて少しもズレることはない。
 「だめだめダメダメ駄目駄目駄目駄目、無理無理無理無理!!!」
 無駄だと分かっていつつも、叫ばずにはいられない。舌に器具を噛まされていたからそんなに明瞭にしゃべれているわけがなかったが、それでも何を叫んでいるのか分かるくらい、大声で激しくわめき散らし続けていた。

 そのとき気持ち良かったかどうかなんてもはや意識すらしていない。
 とにかく頭の中にあったのは「このままこれを続けられたらヤバい」それだけだ。

 「だめだめダメダメとめてとめて止めて止めてってばむりだって無理なのお願いやめていやぁあぁぁぁぁぁああぁぁぁ―――!!!」
 もう言語にならない、いつ終わるのこれ。
 頭が真っ白になって身体が自分の意思とか関係なく跳ねる。
 手足が滅茶苦茶に動く。
 それなのにのに拘束されていて逃げられない。
 自由になる手首と足首、そして頭の部分だけが誰も居ない空間に向かって私の身体の危機を訴えてる。

 しばらく声にならない叫びを上げたのち、どっと力が抜けて私は現実に引き戻された。頭の中がグルグルしててチカチカする。アイマスクしてるのに幻覚が見えるようだ。
 このときイってしまっていたのは言うまでもない。

 でも次の瞬間、私はこの悪夢が止まらないことを嫌でも思い知らされることになった。股間を責め苛んでいる震動はなおも継続中であり、すぐに熱い感覚が全身を包み再び私をあっち側の世界に引き戻していく。
 そんな時だ。
 「ブー♪」
 ブザー音が響き渡り、私は一瞬、また現実に引き戻された。
 その時の自身の表情を知る余地もなかったが、きっと恐怖に青冷めていたのだと思う。
 いまので1分?
 そんな…いまこの瞬間にも爆発してしまいそうなのに。
 それが、あと10…何分だっけ?
 無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理無理!!
 私は恐怖に暴れ狂った。
 金切り声を上げながら動かない全身を渾身の力でバタつかせ、唯一自由になる頭を思いっ切り椅子の背もたれに打ち付けた。何度も、何度も。
 あぁ、この椅子の背もたれが鉄か何かで出来ていたならば、頭を強打して死んで楽になれるのに。
 頭部が当たる部分は、非常に柔らかくクッションのように包み込んでいた。座り心地満点の文句ない椅子だ。こんな地獄の処刑中じゃなかったなら。

 「死ぬー死んじゃう止めて止めてとめてとめて許してもうやめるもう嫌助けてお願い死んじゃう死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ止めて止めて止めて止めて止めて!!!!!」

 アイマスクは涙と汗でびしょびしょだ。だがもうひとつ、思いもがけずびしょびしょになった場所がある。
 股間だ。あっと思った時には止めようがなかった。2度目の絶頂を迎えたときに思いっ切り噴出してしまった。

 「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!!出ちゃう出ちゃう出ちゃう!!」

 全身悶えながら「ズボンはどうなるんだろう」「このまま帰るんだろうか」とか、一瞬頭をよぎった。いまから思えば、このときはまだそんな余裕があったのだ。
 オシッコ漏らしてしまってからまもなく私はもう1度達してしまい、再び勢い良くあそこから熱い液体が噴射された。もはや蛇口の壊れた水道のようだった。

 その時、2分目のブザーが鳴った。
 もう私はその時、何かを思うことすらも放棄していた。
 自分が死ぬのかどうかすらも分からなかった。
 ただ辛い。苦しい。止めて外して解放してオネガイダカラ。
 叫び声もだんだんと弱々しくなっていく。
 イクっていうのは、身体的に例えれば100mをダッシュで走り切ったようなものだ。
 その焦燥感と疲労感、達成感は計り知れない。
 ところがこの責めでは、達成感を得たと思ったら休む時間もなく次の100mダッシュが始まるのだ。しかもそのタイムはより短くなっていく。どんなにヘバっても無理やり走らされて終わることがない。それがどれだけ体力を消耗させ、精神を蝕むものなのか。体験のない人にいくら言っても分からないだろう。

 3分目のブザー。
 もはや叫び声か喘ぎ声か分からないくらい消耗し切っていた。何て声を上げたのかは記憶していない。とにかく喉が渇いて仕方なかった。何か飲みたい。自分のオシッコでもいいから飲みたい。全身が汗と体液でグショグショになり、真夏の運動部の猛特訓の如く身体の水分という水分が外に溢れ出てしまっていた。この頃になるともう股間から出る水分は完全に垂れ流しである。自分でも分かっているがもうどうする気力もない。ただひたすら止めて止めて苦しい死んじゃうお願い苦しい止めて死ぬ死んじゃうと息も絶え絶えになりながら絞り出すのみ。

 4分目のブザー。
 これ以上体内から出る水分がなくて、身体が火照って吐きそうだ。お金がなくて食事を抜いていたのが幸いし、ゲロだけは吐かずに済んだ。だが口は空きっぱなしでよだれが垂れ流しになっていた。身体の疲労は極限状態で(それでもまだ、この後に比べたら序の口だったが)、私はもはや人形のように力が抜け切っていた。
 そういえば、これ4度目のブザーじゃなかったろうか。
 いまの震動ですら死にそうなのをギリギリのところで耐えているのに、これで震動の強さが上がったりしたら本当に死んじゃう。
 ウソでしょ。ねぇウソでしょ?

 左手の部分にスイッチがある。
 最初に無効化したはずだが、藁にもすがる思いで押してみる。
 もちろん反応はない。
 そんなことはお構いなしに何度も押す。もしかしたら間違って止まるかもしれない。
 カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…。
 何度も押す度に絶望で心身が苛まれる。
 カチカチカチカチカチカチカチカチカチカチカチ…。
 止まって止まってよ、お願いだから止まってよ何でもする何でも言うこと聞くから…。

 私の必死の祈りも虚しくその時は来た。
 5分目を示すブザー。

 突然、股間を襲う震動音のトーンが1オクターブ跳ね上がった。
 私の身体も跳ね上がった。
 拘束椅子が初めて大きく揺れた。

 「ぎGぎY#やYaあ%Aaぁぁぁぁぁーーーー!!!!!」

 どこにそんな力が残っていたのだろう。
 私は渾身の力で拘束に抗おうと精一杯の抵抗をし、人語を超越した獣の声を上げながら暴れ狂った。
 スイッチをどうこうとかいう思考も何もかもすべて消し飛んだ。
 目を見開き口を大きく開け、人とは思えない形相であったと思う。
 振動が強くなって10秒後くらいに私は激しくイった。それまで以上に身体が反応し、体内の血液が沸騰したくらい熱くなり、筋肉が私の意思とは関係なく痙攣を繰り返す。
 またイッた。
 ほどなくしてまたイッた。
 ほどなくしてまた・・・。

 6分目のブザーからは正直もうどうなっていたのか記憶していないが「ずっとイキ狂い続けていた」ということだけは確かだ。
 後で見た映像では、私の身体は拘束された状態でピチピチ跳ねながら反り返り、この世の生き物とは思えない勢いで叫び狂っていた。
 アイマスクで表情は見えなかったが、きっと白目を剥いていたと思う。

 7分目のブザーが鳴ったとき、私はもう意識も曖昧になっていた。
 床下には垂れ流しのオシッコと愛液、全身の体液でできた水たまりが出来ており、むせ返るような何とも言えない臭気が立ち込めていた。
 そんな臭いが鼻をつき、ときたまこちら側の世界に戻されるわけだ。
 気絶した人間をアンモニアで起こす、要はあれと同じことが行われていた。
 もちろん正気?に戻った私を待っているのは突き上げ荒れ狂う快楽地獄である。
 すぐまた絶頂に達し、また全身が脱力して次の瞬間また絶頂に達し、意識が飛んでまた覚醒し…もうイヤ身体が持たない頭がめちゃめちゃになる。

 8分目のブザー。終わらない地獄に叫び続けるその発声内容は次第に「死ぬー」とか「やめてー」とかから、「☆★%#$!!」とか「¥◎*+@!!」というような、人語を超越したものになっていった。もはや意識がある時間よりない時間の方が多かったが、この時点で終了にならなかったということは、私はどうやら「気絶した」とは見なされなかったようなのだ。身体が暴れ悶えていたから、まだまだ続行と見なされていたのだろう。

 9分目のブザー。折り返し地点である。
 この頃の私の状態はもはやこんなだ。
 「あGyぁあぁぁUるひぃ☆★&あぁOめDeぇAhゃあUDぁめぇぐるっひYaっxとめとめあAanん#ぅ$うっ!UeえああTすげてe%とってこれHひぃieeChんじゃひゅGuる+JぃあぁaGyAあぁTぉめTaずGぇtえぇ…!!」

 電動震具の密着が強く押し付けられているにもかかわらず、それほど痛くないのもこの責めの凶悪さを際立たせていた。せめて「痛い」と感じられれば、延々と続く快楽地獄からほんの束の間でも逃げられたかも知れなかったのに。痛くない以上、得られる感覚はクリトリスやおまんこに対する快楽のみであり、それが間断無く送り込まれ続ける以上、延々と絶頂に次ぐ絶頂を繰り返す他はない。そしてこの快楽地獄はあと半分も残されている。それは私にとってそのまま狂って死ねと言われているに等しかった。

 そして10分目のブザーが鳴った。
 「残業」をしなければ、本来ならこれで終わりの時間だったのだ。
 ここで震動がもう1段階上がる。
 再度私の身体は大きく反応し、絶え絶えの喘ぎ声が再び絶叫に変わった。
 「もう…ひゃMeてえぇぇee、鬼、おにiieーーー!!」
 またも激しくイッた。もはや声が裏返っていて、人の発声とは到底思えない。
 もうこの時点になると数秒ごとに絶頂に達していて、常に身体がビクンビクンしている中にたまに激しい波がくるといった感じだ。
 全身に火をくべられたように熱い。
 それはさながら地獄で終わらない責苦を受けている亡者であるかのようだった。

 11分目のブザー。次第に息が苦しくなってきた。何せはぁはぁと吐き出すばかりで吸うことがほとんどできないのだ。
 運動に例えるなら、全力疾走して倒れ、次の瞬間に全力疾走して倒れ、をきっともう何十…ヘタをすれば百回単位で繰り返しているだろう。
 このままでは酸欠で死んでしまう。
 そんな思考能力は既に消し飛んでいたが、もはや大声で叫ぶ体力が残されておらず、ただぜぃぜぃはぁはぁ、ときたま裏声のようななまめかしい声で喘ぎ声をあげながら、「ぐるひぃ、ひんじゃう、ぐるひぃ、ひんじゃう」とうわ言のように呟いていた。

 12分目のブザー。だんだん私の口から喘ぎ声に交じってゲボゲボと咳のようなゲロのような息が漏れるようになっていった。「うるひぃ、ひぃんぢゃう、はぁはぁぜぃぜぃ、もうひゃめ…ひんぢゃう…おにぇぎゃい…あん、はぁ、はぁ…」

 13分目のブザー。相変わらず身体をガクガクと揺らすも、もはや拘束椅子を揺るがすほどの勢いはない。「あ゛あ゛あ゛う゛じ、じぬ、ぐるじ…あ゛ぁ゛ぁ゛らめ、だめ…らってう゛ぅーひいぃぃぃはぁ゛、はぁ゛…」
 喘ぎ声はだんだん喉の奥から絞り出すような濁音混じりになっていった。
 心臓が助けを求めて悲鳴を上げているかのようでもあった。

 14分目のブザー。またも思考が虚ろになりもはやあまり記憶していないが、「ジヌゴロジデモウイヤゴロジデイマズグオネガイゴロジデ…」と呟いていた気がする。もはやこの時、私の精神はきっとコワレテしまっていたのだと思う。

 ついに最終段階、15分目のブザー。
 震動の強さがいよいよ3段階目に達し、私の愚かさに対する処刑の鐘の音が響き渡る。

 「あ゛ぁあ゛AGぎゃYyaあぁあぁあArЯa亜あぁーーーー!!!!!」

 この15分目の変化は私の予想を遥かに越えていた。
 これまでのように「震動が早くなる」というものではなく、言ってみれば「私の股間にピッタリくっついて震動している受け口自体が上下左右さらには前後にとグリグリ動いて刺激の仕方を変える」という意地悪の極みのようなものだったのだ。
 こんな機能をトドメに用意しておくなんて酷すぎる!!

 今までのような単調な震動だけならまだ気が狂いかけながらも持ちこたえられたが、もうそんな状態ではなくなっていた。骸と化していた私の身体に再び生気が送り込まれ、強制的にあちら側の世界からこちら側の世界に呼び戻される。
 四肢が張り裂けんばかりに、首が千切れんばかりに、この地獄から逃れんと抵抗するが、どれほどの力を込めようとも拘束はビクともしない。

 無茶苦茶に手を振り回すと、そこには例のスイッチがあった。
 無我夢中で押す、押す、押しまくる。

 「どぉmEでeえぇЁえ%ぇぇ!!dぉをzIぃてDoまxでGμれeN愛nO!!」
 (止めて!!どうして止まってくれないの!!)

 止まるわけはなかった。
 壊れたロボットのようにスイッチを押し続けるも、スイッチは虚しくカチカチ響くだけ。

 私はもう限界をとっくに超えていた。

 全身の血液が血管という血管を滅茶苦茶に走り回ったかのごとく身体の感覚が滅茶苦茶になり、脳内の景色がフラッシュを繰り返す。
 もはや枯れ果てた喉を極限まで振り絞り、誰もいない空間に向けて絶叫し…。

 「いやYyAあぁa@ぁぁぁーーーダメダメ駄目だめ狂う狂っひゃう死ぬ苦ひいGaYあぁ%☆しぬしぬ死むしむIyeぃやあぁaAぁぁ☆%¥#GぎゃAaぁぁぁたすけてひゃすけとめてトメテ止めてしぬ死ぬシヌしむ殺ひゃれЯるUuうぅぅぅTa−すげでぇ死ぬひんじゃうEeeiぃiyゃゃゃああぁ@ぁ%#*ダメDaめ駄Me絵えぇ%*¥うWaAa死ぬしぬしぬシヌシヌシヌ殺SてコロシTeタスKてGぎieЁぇぇぇぇiいぃぃYぁぁぁぁとめてYaめ助け死ぬしむ止めとめとMぇAaaぁぁぁ&@#唖GHぁAぁあぁぁ騨ずGeぇ%たづKぇTTぇ血ぬuヂ濡chiグHeへhぇ¥ぁあぁ゛aaaあ堕むぇeiuぇD#ぁもEeえぇieZぃNぉuだZuげ」(ここで意識停止)

 

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『性感反応被験体File No.01-a 女子大生(19)』

著者 渡硝子の性感反応駆け込み寺 渡硝子

女性の性感・快楽に関する悩み「どうしてイケないんだろう」「私って不感症では」等に対し、渡硝子の経験に基づくアドバイスを行なうページです。

 

 

 

 

 

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